4.19.2017

アナログとデジタル

コンピューターを使って漫画を描く事をデジタル、
紙とペンを使って漫画を描く事をアナログというが、
この「アナログ」、デジタルに比べ古臭いとか劣っているとかいう意味合いが含まれているようでいやだった。なのでボクは「手描き」と表現していた。
でも考えてみれば、デジタルでも手を使って描き込んでいくんだから手描きだよなと思った。
また、アナログは「連続した」という意味。それに対しデジタルは「とびとびの」という意味だ。時計に例えると分かりやすい。
なので見下した表現でなく、敬意を持って「アナログ」と言う事にする。

ボクは現在、漫画を描くのにほとんどをデジタルで描いている。
アタリ、下描き、ペン入れ、ベタ、トーン、ホワイト、枠線…原稿作業は全てだ。
紙に描くのはネームくらい。
正直、自分と相性がいいんだろうなと思う。たくさん恩恵を受けているし、デジタルだからこそ表現できている部分も多い。

ひとつは、いくらでも描き直しができる。
アナログでは、修正はホワイトを使う。1度塗っただけでは薄くて透けてしまうので、何度も重ね塗り。また、そうすると表面がでこぼこになるので上から描き足すのは難しくなる。髪の毛のような細い線だと特に。いよいよひどくなったら原稿を切り貼り。修正のめんどくささからくるプレッシャーは確かにある。
それに対しデジタルでは、ペン入れをしながらその主線を修正したり描き足したり、拡大・縮小、移動、回転…なんでも容易に修正できる。
デッサン確認のため画面を反転させるのもワンクリック。
レイヤーに分かれているので、複雑に重なった部分を描く際も便利。
デッサンをとるには加筆・修正の繰り返しなので、それがやりやすいデジタルでの優位性は使っていて実感する。

もうひとつは、トーンをいくらでも気軽に使えるところ。
ワンクリックで貼れるのはもちろんだし、光や影の表現ですごく役立つ。
アナログでは、使うとしても61やグラデといった2・3種類くらいに抑えたいと思っていた。
デジタルで使い放題になると、60線の濃度を10段階、白、グラデ(幅を選び放題)、空、柄、ベタフラ…と多くのトーンを使うようになった。
アナログの頃、あまりトーンを使いたくないなと思っていたが、それはトーンを買うのが・貼るのがめんどくさいというのが大きな理由だったんだなと気付いた。
だって思い描いたイメージを描こうとすれば、自然とトーンを貼っちゃうんだから。

と、デジタルの恩恵は本当に大きい。
液晶ペンタブレットを購入して、線画からデジタルで描くようになってもうすぐ5年が経つ。画力・デッサン力の向上を大いに助けてくれたと感じている。
デジタルは、漫画を描くのに相性がすごくいい。

そして今感じているのが…








手描きのアナログがすっごい魅力的!!!

コミックスを読んでいて、アナログの紙に描いた原稿って一目見て分かる。
そして、それってすっごく艶やかで色気があって。もっと言えば神秘的なほどなんかこもってて。
紙に下描きして、ペン入れして、ベタ・ホワイトを入れて、トーン貼って、仕上がった生原稿を見ると「すげぇ!!!」ってなる。
だってデジタルで言えば、ひとつのレイヤーですべて仕上げているって事だよ。以前は当たり前のように自分もやっていたのにね。

デジタルだといくらでも拡大できるから小さなものに時間をかけて描き込む事がよくある。ひとコマを21インチのモニターいっぱい(またはそれ以上大きく)表示させて描くのなんてしょちゅうだ。3cmの線をモニターで30cmに表示して、腕をグワーッて動かして描いたり。
人によるかもしれないけれど、デジタルにしたからってそんなに作業時間の短縮にはならない。むしろ先ほどの理由などで、余計に時間がかかっているように感じる。
アナログだと目の前のB4の紙を埋めればいいんだからね。ストロークだって適度で少なくて済むし余計な描き込みを抑えられる。

それに、やっぱり熱さがのるんだよね。
紙とインクで現実の物質に描いて産み出すわけだから。生々しさが強い。
特にスポーツやバトルといった動きの描写で違いを感じる。

光を発するモニターを見るより、紙を見る方が目にもやさしい。
人って、機械に触れ続けているより自然物に触れている方がストレスも少ない。
この前感じたのだけど、紙にガシガシ鉛筆を走らせるのってやっぱり楽しいものだ。

また手描きのアナログで描いてみたいなぁ…そうしたら作画台を用意して、原稿棚も欲しい。ブックスタンドも左脇に置いて。資料の検索と見るためのモニターも…と考えたら、デスク上にいろんなモノが増えてしまう。

あまりモノを増やしたくない観点からすると、アナログって真逆だ。
紙に描いて作品を作り出せば原稿が積み上がるし、そのための画材だって常に必要。モノが増え続ける。
デジタルだとそれがコンピューター上ですべてできるから、現実にモノが増えるわけではない。

でも、創作ってそういうもんなのかな。
銅像だって陶器だって織物だって…作品を作り続ければ貯まっていくわけで。
その間で折り合いをつけられる点を見つけるものかな。

とりあえず、紙に鉛筆とペンで描く事をしたい。
調達する作画台を画板にするかトレス台にするか…考えているところです。